Coincidence and fate

So what's the use between death and glory?

Official髭男dismの『What’s Going On?』が好きな話

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Official髭男dismがマージで好きで、一生聞いているわけですが、やっぱりね良いんですよ。

Vo.藤原さんが作って歌うありえん高音は、ナチュラル低音ボイスの自分では再現不可能な楽曲も多いんですけど。風呂場で無限にblue toothスピーカーからヒゲダンプレイリストを流しながら一生歌ってますよ、『pretender』とかをね。仮に外に聞こえてたらねメチャメチャ恥ずかしいですし、迷惑この上ないと思いますけどね。本当にスミマセンね。

正直『Pretender』良い曲だなー*1 ちょっと他の曲も聞いてみるかポチーくらいの入りだったので、ここまで自分のフェイバリットになるとは想像してなかったわけですけど、なんで自分が嵌るのかっていうと音自体がとてもポップでありながら根底にはめっちゃソウルな部分があるからだと思うわけです。

 

初期の音作りとか、(これはさんざん言われていると思いますけど)モロ「ブルーノ・マーズ」やんけー!って感じのやつも多いですし、それこそ初期アルバムには『MAN IN THE MIRROR』*2なんてモロなタイトルのやつもあるわけで、やはり彼らの楽曲の根底にはしっかり「ソウル」があるんすよね。そこがやっぱ好きになっちゃう要因なんだろうなーとかは思うんですけどね。

そんで表題の件なんですけど、2016年にリリースされたシングルで『What’s Going On?』って曲がありまして、これがホントにメチャクチャ好きなんですよね。

タイトルは70年代ニューソウルのド定番マーヴィン・ゲイの『What’s Going On』へのオマージュであることは初回限定版のジャケット(+下記リンク記事で名言されてる)で一目瞭然なわけですけど、精神面でもしっかりゲイの意思を引き継いだ楽曲になっているのがまたとにかく良いんです。

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ゲイは当時ベトナム戦争を中心としたアメリカの現状を非難し糾弾するという社会的メッセージを込めてこの楽曲リリースしたわけですけど、藤原さんが『What’s Going On?』に込めた社会的メッセージは「いじめ問題」。

でこれは意外と難しいもんで、「いじめ」とかを啓蒙しようとするとどうしてもそれを行っている方への「怒り」だったりとか、あるいは「人間が人間たる人間性」みたいなフワっとした物にフォーカス当てた感じの、つまり「分かり合おう」「信じあおう」みたいな、「他人事感満載」な歌詞になっちゃいがちなわけですよ。「お前のその謎の立ち位置なんなんだよ」ってなる、なんか聞いててイラつくやつが出来上がりがちだと思うんですけど。

ヒゲダンの優れているところはいじめを受けている「当事者」に寄り添っているところなんですよね。しかも「他人事」ではなく、きちんと心に寄り添っている感じがとても好感を持てるんです。

下記インタビューで藤原さんが『What’s Going On?』に込めた気持ちに関して話しているんですけど、やっぱりね藤原さん自身が「いじめ」を受けていた「当事者」だったみたいなんですよね。

https://realsound.jp/2016/10/post-9916_2.html

これは、合点を得た気持ちになりました。やっぱそうだよねーという。

恐らくいじめでそれなりに嫌な気持ちになって、でも大好きな音楽があって、なんとかかんとかここまで生き抜いてきた、そういう自負があるからこそ作れる歌なんだろうなと思うんですよね。

What’s Going On? 僕らはもう 生き抜いてやろうよ
イヤホンつけたら 1人じゃないから

What’s Going On? イメージしよう 最高の世界を
現実ばかりに 縛られなくてもいいんだよ

『What’s Going On?』Official髭男dism

この「現実ばかりに縛られなくてもいいんだよ」ってスゲー――優しいと思うんですよ。

いじめとか、それだけじゃなくて、なんか辛い立場にあるときほど、「戦え」とか「現実見ろ」とかドヤ顔で行ってくる人がいると思うんですけどね。

でも、戦えなかったり、現実を見ることができない気持ちだったりすることは往々にしてあるわけですよ。だったら、別にそれと向き合う必要なんか無いわけです。一旦現実逃避してね、楽しい事だけ考えて自分を守ること。そっちの方が重要なわけですよ。

とにかく死なないで、生き延びることを重視して、その先どうするか考える。それが重要だと思うんですよ。

だって人生は長いんだもの。その辛い時はずっと続くわけではないわけだから、まずは見て見ぬふりして、やり過ごして、その後の人生を楽しく生きる方が大事なんすよ。

それを啓蒙することの方が「いじめをする側に怒りをぶつける」ことよりもよっぽど救いになったりするんですよ、”いじめられてる側”からすればね(もちろんいじめがダメなんつーのは当たり前の話ですけど)

 

恐らく藤原さん自身が、現実から逃げる手段として、マーヴィン・ゲイとかね、マイケル・ジャクソンとかの音楽に救われたんだと思うんですよ。ソウルミュージックって”救済”の音楽だから。それで救われて、今こうしてその救ってくれた音楽にオマージュを捧げつつ音楽製作をして、日本で一番勢いのあると言って過言じゃないバンドのフロントマンとして大活躍しているわけですよ。これってめちゃくちゃ心強いじゃんね、同じ立場にいる人にとってはさ、って思うわけですよ。 

What’s Going On? What’s Going On?
誰にも言えなくてもいいけれど
What’s Going On? What’s Going On?
このままお別れはないだろ
待ってよ ダメだよ ダメだよ 辛いよ

What’s Going On? 愛してるよ この手を掴んでよ
生き抜くことが 反撃のビートだ 傷は消えないけど

『What’s Going On?』Official髭男dism

そういう人が、「生き抜くことが反撃になる」「傷は消えないのも分かってる」でも俺が君を「愛してる」から「この手を掴んでよ」と言ってくれるのはさ、やっぱりスゲー素敵だよなぁって思うんですよ。

「いじめをなくそう」なんて言ったところで、どう考えてもなくならないわけですよ現実的に。つまり世界はキレイじゃなくって、歌詞にある通り「黒焦げた世界」なんですよ。でもそんな「黒焦げた世界」でも「手を取って」「愛してる」と言ってくれる人がいてくれれば、案外悪くないんじゃないかなと思えると思うんですよね。

そうやって手を取ってくれた人が「一緒に未来へ行こうよ」と語りかけてくれることは、なんつーか”悪くない”よなって思うんですよね。

 

間違いなく、今日もクソみたいな世の中だけどさ、こういう音楽を奏でる人がいて、それがキッチリ売れているってことも、なんか悪くないよねーって。

 

そう思えるのもあってヒゲダンとこの曲が好きなのかもなーみたいな話です。

ヒゲダン聞いてね。


Official髭男dism - What's Going On?[Official Video]

*1:居酒屋で無限リピートしていた

*2:1988年リリースのマイケル・ジャクソンのシングル